志賀さんの思い出

2018年11月ですから、お亡くなりになる2年近く前でしょうか。
味酒かむなびにいらっしゃったときに撮った俳優の志賀廣太郎さんとの1枚です。

それまでも大阪で仕事をした折にはよく顔を出してくださいましたし、一緒に飲みに連れて行っていただいたりも。

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お店で使うための納豆を作るようになって20年近くになりますが、実は最初に納豆を作るきっかけを与えてくださったのは志賀さんなのです。

当時、飲食業界に入ってまもない頃、山中酒の店の直営店「さかふね」にて夫婦で働いていました。ある日、志賀さんが飲み仲間の俳優さんと一緒にご来店。彼が所属していた「青年団」のお芝居はずっと観ていましたので、志賀さんとは面識はあったのですが、飲みにいらして下さったのは初めてで、ちょっと緊張したのは覚えています。

一杯目にお出ししたのは、食前酒としてお出しした濁り酒で作った梅酒。何口か召し上がっていた後、涙を流されているのに気づきました。
「ぼくも毎年、梅酒を漬けているけど、こんなにおいしい梅酒は初めてだ」
「あの声」でです。なるほど「俳優」という人は、こういうふうに「世界」を味わうんだなあ、と感じたのをよく覚えています。

その後は打ち解けて、カウンター越しにいろんな話をさせて頂きました。
お気に入りの居酒屋、美味しかったお酒、こんな料理を作ってみた・・・
旅公演も良くされていますから、料理はお手の物なんですねえ。
「なんでも自分で作ってみたらいいんだよ」
「納豆なんかも作ってみたらいいじゃない。藁と大豆があれば簡単にできるよ」とも。

その何気ない一言に女将が食いついて、ネットで調べたりして自宅で彼女が納豆を作り始めたのが始まりでした。最初はうまくいかないことが何度もありましたがすぐにコツを掴み、今日にいたるまでお店で使う納豆を作り続けてきたわけです。

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納豆工房を作ろうと思い立った時、一番最初に考えたのは、志賀さんのことです。

納豆は決して「男前」ではなくていい。
ただ食卓の「名脇役」であればいい。
そんな「街の納豆屋」でありたいなあと。

はい、そんなわけで、私たちにとっての「らくだ坂納豆工房」の陰のシンボルは、志賀廣太郎さんなのです。

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パッケージを考えるうえで一番最初から考えていたのが、志賀さんのイラストをワンポイントで使いたいなあということ。
パッケージデザインをお願いした、女将の古くからの飲み友達でもあるデザイナー、d.works(@yumiruxyumiru)さんに、無理は承知で「ナンシー関さん風に」と依頼したところ、予想以上に「らしい」イラストを書いてくださいました。


「あのイラストはもしかして、ナンシー関さんですか?」
時々、お客様に聞かれますが、そう気づいてもらえるだけで嬉しいものです。

そう言えば、ちょっと気になって調べてみると、ナンシー関さんがお亡くなりになったのが2002年。
志賀さんがキムタクと共演した「世にも奇妙な物語」などTVに出演するようになったのが2001年。
ですから、ナンシー関さんは志賀さんのことを絶対にテレビでチェックしていたはず!
もし彼女が志賀さんのイラストを書いていたら、その傍らにどんな一言を載せるのだろう?

堤真一さんと共演した舞台『才原警部の終わらない明日』観劇後に(2016年1月)

この記事を書いた人

らくだ坂納豆工房

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